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1 売買等の継続的取引契約
(1)独占的取引契約
双方的な独占的取引契約の条項例
1 甲は、本売買契約の目的物について、乙からのみ購入するものとし、乙以外の第三者からは購入しない。
2 乙は、本売買契約の目的物について、甲に対してのみ販売するものとし、甲以外の第三者に対しては、販売しないものとする。
売主・買主双方が独占的に取引できる場合と、片面的な場合とがあります。
双方が独占的取引権限を有する場合はまだしも、片面的な場合、大きなリスクを伴います。
例えば、買主のみが独占的な権限をもつ場合、売主は、その相手方である買主にしか売ることができませんが、買主は、別の業者からも買い入れることができるため、別の業者からの買い入ればかり行い、実際には買ってくれないということをされてしまうと「飼い殺し」の状態になってしまいます。
なお、買主において、売主からその販売する商品を購入する契約を締結し、他の競争者には販売させないこととする場合、これを一手販売契約と呼ぶことがあり独禁法上の排他条件付取引として、違法なものとされる可能性があります。
片面的でなくても、買主が転売能力などが低く、期待したほど購入してくれないリスクや、売主の販売・製造能力が低かったり、品質が期待どおりでなかった場合のリスクなどが想定されます。
こういった点に留意して検討する必要があります。
(2)再販売価格の指定
ある商品の生産者または供給者が卸・小売業者に対し商品の販売価格を指示し、それを遵守させる行為を再販売価格の指定といいます。
このような取引は、不公正な取引とされ、独占禁止法に違反することになります。
但し、例外的に一部商品については一定の要件の元に容認している場合がありますので、これらの点に留意して契約書を作成する必要があります。
(3)秘密保持契約
秘密保持契約の条項例
第1条 |
本契約において秘密情報とは、本事業遂行の目的で、書面電子メール、口頭、電子記憶媒体その他形態を問わず、相手方より提供もしくは開示された一切の情報をいう。 |
第2条 |
甲及び乙は、相手方から開示された秘密情報を厳重に保管・管理するものとし、秘密情報を本事業を遂行する目的以外に使用してはならない。 2 被開示者は、開示者の書面による事前の同意を得ることなくして秘密情報を第三者に開示し、または漏洩してはならない。 |
第3条 |
被開示者は、本事業を遂行する上で必要最小限の範囲の従業員に対してのみ、秘密情報を開示し、または利用させることができる。 |
第4条 |
被開示者は、開示者の事前の書面による承諾なくして、秘密情報を複製してはならない。 |
第5条 |
被開示者は、本契約が期間満了又は解除により終了したときは、秘密情報の使用を直ちに終了するとともに、秘密情報に関するすべての書面及び媒体ならびにそれらの複製物を開示者に返還しなければならない。 |
「契約終了後も、継続して効力を有する」という文言を入れておかなければ、本体の契約が終了した後、相手方に開示した秘密情報の漏洩を防止できません。
他方、契約終了後も継続する場合、相手方から開示された情報を用いることが事実上できないことになることもあり得るため、その後の業務に支障を来すということも起き得ます。
具体的な状況にてらし、どちらにした方がいいか検討する必要があります。
なお、
契約終了後○○年間効力を継続する。
ということにする方法もあります。
契約終了後の効力を維持する条項例
第□□条 第△△条、第○○条の規定は、本契約が終了した後も効力を有する。
第××条 第△△条、第○○条の規定は、本契約が終了した日から3年間効力を有する。
(4)反社会的勢力の排除
反社会的勢力排除に関する条項例
甲及び乙は、互いに相手方に対し、本件契約時において甲又は乙(甲又は乙が法人の場合は、代表者、役員又は実質的に経営を支配する者。)が暴力団、暴力団員、暴力団関係企業、総会屋、特殊知能暴力集団、その他反社会的勢力(以下「暴力団等反社会的勢力」という。)に該当しないことを表明し、かつ将来にわたっても該当しないことを確約する。
2 乙は、甲が前項の該当性の判断のために調査を要すると判断した場合、その調査に協力し、これに必要と判断する資料を提出しなければならない
暴力団排除条例の制定などに伴い、社会的・法律的に暴力団との関与をしないことが、コンプライアンス上重要視される傾向にあります。
そこで、契約の場面で、反社会的勢力を排除する契約条項の取り交わしを求められることが多くなっています。
(5)裁判管轄
裁判管轄に関する条項例1(特定の裁判所)
本契約に関して生じた一切の紛争については、○○地方裁判所または○○簡易
裁判所をもって第1審の専属的合意管轄裁判所とする
裁判管轄に関する条項例2(一方当事者の所在地を管轄する裁判所)
本契約に関して生じた一切の紛争については、甲の本店所在地を管轄する地方裁判所または簡易裁判所をもって第1審の専属的合意管轄裁判所とする
裁判管轄に関する条項例3(双方当事者の所在地を管轄する裁判所)
本契約に関して生じた一切の紛争については、甲または乙の本店所在地を管轄する地方裁判所または簡易裁判所をもって第1審の専属的合意管轄裁判所とする。
裁判になった場合に、どの裁判所で行うかを合意する条項です。
この条項がない場合、民法で定める管轄裁判所で行うことになるのですが、その場合、自社の本店所在地でも、相手方の所在地でも、できる場合が多いです(争いになっている債権や内容にもよります)。
しかし、この管轄合意の条項を入れることで、専属的にいずれかの裁判所が管轄裁判所となるため、できれば自社に有利な場所にしておきたいところです。
ただ、それは双方にとっていえることであるため、「力関係」によってくるところが多いかと思います。
2 労働契約
(1)退職後の競業避止義務、秘密保持、情報持出の禁止
秘密保持、情報持出の禁止に関する誓約書例
第1条(秘密保持の確認)
私は貴社を退職するにあたり、以下に示される貴社の技術上または営業上の情報(以下「秘密情報」という)に関する資料等一切について、原本はもちろん、そのコピー及び関係資料等を貴社に返還し、自ら保有していないことを確認致します。
① | 製品開発、製造及び販売における企画、技術資料、製造原価、価格決定等の情報 |
② | 財務、人事等に関する情報 |
③ | 他社との業務提携に関する情報 |
④ | 上司または営業秘密等管理責任者により秘密情報として指定された情報 |
⑤ | 以上の他、貴社が特に秘密保持対象として指定した情報 |
第2条(秘密の帰属)
秘密情報は、貴社に帰属することを確認致します。また秘密情報について私
に帰属する一切の権利を貴社に譲渡し、その権利が私に帰属する旨の主張を致しません。
第3条(退職後の秘密保持の誓約)
秘密情報については、貴社を退職した後においても、私自身のため、あるいは他の事業者その他の第三者のために開示、漏洩もしくは使用しないことを約束致します。
第4条(損害賠償)
前各条項に違反して、貴社の秘密情報を開示、漏洩もしくは使用した場合、法的な責任を負担するものであることを確認し、これにより貴社が被った一切の損害を賠償することを約束致します。
ア 従業員
従業員が、退職後に同業他社に就職する、または同業を自ら始める場合、会社としては、ノウハウ等が流出する恐れがあり、これを避けるたいところです。
また、会社が他社との取引契約中において秘密保持義務を有している場合に、その秘密を従業員が漏洩することがあっては、会社が取引先に対して義務違反をすることになってしまいます。
そこで、退職後の情報持出を禁止する旨などの誓約書を作成するか、就業規則にそうした内容を記載するといった対応が考えられます。
イ 取締役
取締役は、もともと、在職中については、会社法により競業避止義務を負っており、これに違反した場合は損害賠償義務を負ったり(会社法423条)、解任の正当事由にもなりえます(会社法339条)。
取締役であることによって得た情報等を利用して会社の取引先を奪ってしまうことを防止するために課された義務といわれています。
しかし、退社後の競業避止義務を定めた法律はないため、競業避止契約を締結しておく必要があり、取締役は経営者として会社への関わりが強く、内部情報も多く有していると考えられることから、従業員の場合よりも、競業避止契約の効力が認められやすい傾向にあるといえます。
(2)労働条件
労働契約書例
雇用期間 |
1 期間の定めなし 2 年 月 日~ 年 月 日まで |
勤務場所 | |
仕事の内容 | |
勤務時間等 | 時 分から 時 分迄(うち休憩時間 分) |
休 日 | |
所定外労働 | 1 所定外労働をさせることが( 有 / 無 ) →(最大 時間程度) 2 休日労働をさせることが ( 有 / 無 ) →( ) |
休 暇 |
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賃 金 | 1 基本給 月給( 円) 2 諸手当 イ( 手当 円) ロ( 手当 円) ハ( 手当 円) ニ( 手当 円) 3 所定外労働等に対する割増率 イ 所定外 a 法定超( %) b 所定超( %) ロ 休 日 a 法定 ( %) b 法定外( %) ハ 深夜 ( %) 4 賃金締切日(毎月 日) 5 賃金支払日(毎月 日) 6 賃金の支払方法( ) 7 賃金支払時の控除 →(費目、金額等 ) 8 昇給( 有 / 無 ) →(時期、金額等 ) 9 賞与( 有 / 無 ) →(時期、金額等 ) 10 退職金( 有 / 無 )→(時期、金額等 ) |
退職に関する事項 | 1 定年制 ( 有 ( 歳) 、 無) 2 自己都合退職の手続(退職する 日前迄に届け出ること) 3 解雇の事由及び手続 ( ) ○詳細は、就業規則第 条~第 条、第 条~第 条 |
その他 |
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労働契約の内容は書面化し、適切に労働者に説明しておくべきで、そのことにより未然にトラブルを防ぐことができます。
予め決めてしまうと柔軟に対応できないと考える経営者の方もいらっしゃいますが、事業を継続していく中で、事業規模が大きくなったり、スタッフも変わっていくと、トラブルを招くものです。
以上の契約書例にかかわらず、特別な内容を盛り込むべきか否かを含め、内容や作成方法について、ご相談をお受けしています。
3 債務弁済契約・保証契約など
(1)債務弁済契約
債務弁済契約の条項例
(債務の確認)
第1条 乙は、甲に対し、○○○として○○○○○○円の支払義務があることを認し、これを次条に従い弁済することを約し、甲はこれを承諾した。
(支払方法)
第2条 乙は、甲に対し、前条記載の債務を次のとおり支払う。
1 平成○年○月から平成○年○月まで毎月○日限り 各月○○○○円
2 平成○年○月○日限り ○○○○円
(期限の利益喪失)
第3条 以下の場合には、乙は、当然に期限の利益を失う。
1 乙が第2条の分割金債務の支払を1回でも怠ったとき
2 乙が、強制執行、仮差押えを受け、又は競売・破産手続開始・民事再生手続開始の決定を受けたとき
(遅延損害金)
第4条 乙は、期限の利益を喪失したときは、甲に対し、第1項記載の金員から既払い金を控除した残金及びこれに対する期限の利益喪失の日の翌日から完済まで年6パーセントの割合による遅延損害金を支払う。
分割払いの合意をする場合、支払を怠った場合に、残りの債務を一括で支払う条項を入れておく必要があります。この一括で支払わなくてはならなくなることを、「期限の利益喪失」といいます。
期限の利益が喪失しなければ、原則として期限が来ている分しか請求できないため、しばらく滞納が続いても、裁判では、原則として期限が来ている分だけしか判決が認められなくなってしまうため、期限未到来の部分について判決が得られないおそれがあります。
(2)執行受諾文言
執行受諾文言の条項例
甲は、本書記載の金銭債務を履行しないときは、直ちに強制執行に服する旨陳
述した。
公正証書によって金銭債務の支払を約束した場合、執行受諾文言を入れることで、判決を得なくても、強制執行をすることができます。
(3)連帯保証
連帯保証契約の条項例
第1条 乙は甲に対し、丙が甲に対して負担する下記債務(以下、本件主債務と
いう)について、本日、丙と連帯して保証する。
記
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第2条 乙は、甲から本件主債務について本契約及び甲丙間の金銭消費貸借契約の各約定に基づく請求を受けたときは、直ちに甲に対し支払う。
第3条 乙は、丙に弁済の資力があり、かつ、これに対する強制執行が容易であことを証明しても、甲からの執行を拒むことはできない。
4 賃貸借契約
当事務所では、賃貸借契約の契約書に関しても、普通借地・借家以外にも、定期借地、事業用借地、ないし定期借家など、様々な契約書の作成のお手伝いをしています。
5 その他
以上の契約以外も、当然、様々な契約形態があります。
理解しないまま、契約をしてしまうことは、現代においては致命的なことにもなりかねません。
契約書の作成はもちろん、契約を締結するに際し、あるいは、締結した後にでも、疑問があり、相談をしたいという、相談のみのことであっても、お気軽にお問い合わせください。
相談のみでも、一生懸命対応します。